web3とはなにか

出典:http://chimera.labs.oreilly.com/books/1234000001802/ch06.html#_the_extended_bitcoin_network)ビットコインのPtoP概略図

web3とは、P2P(ピア・ツー・ピア)で繋がれたネットワークを使い、そのネットワーク上でブロックチェーン及びスマートコントラクトをもとに発展したサービスの総称と考えられる。

具体的には暗号通貨、DEX、DeFi(ディー・ファイ)、メタバース、NFT、Play To Earn (プレイトゥアーン)、ICO、DAO等などのサービスだ。

そして、その最大の特徴は中央集権的でないこと。「非中央集権のインターネット」を意味し分散型でGAFAのような巨大な組織ができないと言われている。

また、もう一つの重要な特徴はトラストレス(信用不要)という今までにない画期的なシステムだ。

トラストレスとは、不正が不可能なブロックチェーンをベースにすること。そうすることで国や組織や個人などの第三者を信頼する必要がなくなる。

本当にそうなのだろうか?その答えを得るためにはweb3とはなんなのかをちゃんと知る必要がある。web3はいかに始まり、拡大しているのか時系列で調べてみた。

始まりはビットコイン

なんといってもweb3はビットコインを語らなくては始まらない。

通貨は本来国家への信用を基盤に使用されるもので通常は一つの国に一つの通貨がある。しかしビットコインにはその国家が存在しないしFRBや日銀などの発行元を持たない。それではビットコインとはなぜ通貨として存在しているのか?

それを探ることから始めていこうと思う。

2008年

ビットコインは10月31日ナカモトサトシが暗号技術系メーリングリスト「暗号技術と政治的影響を考える節度あるメーリングリスト」へホワイトペーパーを発表したことからはじまる。

web3はこのホワイトペーパーから始まったと言っても、誰も反対しないに違いない。web3を知りたければぜひ一度読んだほうがいい。

まずこのビットコインのホワイトペーパーを見てみよう。(ホワイトペーパーとは企画や構想、技術的な内容などが書かれた公開文書)

「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:P2P 電子通貨システム)」(2008年10月31日)

日本語訳
https://bitcoin.org/files/bitcoin-paper/bitcoin_jp.pdf

ビットコインのホワイトペーパーこう始まる

「完全なP2P電子通貨の実現により、金融機関の介在無しに、利用者同士の直接的なオンライン決済が可能となるだろう。」

ここでのキーワードは〝P2P〟と〝金融機関の介在無し〟。

P2Pについて簡単にふれておくと、今のインターネットのクライアントサーバシステムではなく、上記のイラストのように役割を持ったPCどうしが横につながったもの(つながったPCをノードと呼ぶ)。

つまり中央がないので自然と分散化が進む。と、とりあえずそう理解していただいて先に進もうと思う。

「電子署名により、P2P 電子通貨の機能の一部は実現可能であるが、その機能の主な利点は、信用が置ける第三者機関が二重支払いを防ぐために必要とされる場合、失われることとなる。本論文では、P2P ネットワークの使用による、二重支払い問題の解決策を提案する。」

P2Pと電子署名により〝金融機関(第三者機関)の介在無し〟は実現可能だが、そうなるためには二重支払い問題の解決策が必要だと言っている。

この〝二重支払い問題〟は長年解決する方法を探してきたが見つけることができず、「二重支払い問題は解決できない」と宣言する暗号研究者さえいたほどだ。(中学生にもわかるweb3より)

その二重支払い問題を解決したことによってビットコインが通貨として使われるようになった。

大事なのは二重支払い問題は分散台帳(分散型のデータベース)により解決されたという点だ。この部分もかなり専門的になるので別ページで記載していこうと思う。

「必要なのは信用ではなく、暗号学的証明に基づいた電子取引システムであり、これにより 信用の置ける第三者を介さずに、利用者間の直接取引が可能となる。計算理論上不可逆な取引は、売り手を詐欺から守り、また、買い手を保護するためのエスクロー(第三者預託)機能は容易に実装可能である。」

不可逆な取引とは、あとで支払いの事実が(データ改ざんやしらばっくれなどで)否認できないことである。これがシステムで保証されれば信用の置ける第三者は必要とされない。

つまりビットコインは国家や銀行という信用は必要とはぜず、暗号学的証明に基づいた電子取引システムによりお金の取引が可能になる。と書いている。

ちなみにナカモトサトシが二重支払い問題を解決した、暗号学的証明に基づいた電子取引システムをプルーフ・オブ・ワークという。

2009年

その後、〝Satoshi Nakamoto〟は3万一千行のコードのオープンソースソフトウェアを公開する。

1月3日にはビットコインの最初のブロックを生成し運用が開始される。この最初のブロックは〝ジェネシス・ブロック〟とよばれる。

1月12日にサトシ・ナカモトは暗号技術者でコンピューターサイエンティストのハル・フィニ(Hai Finney)氏に10BTCを送った。

つまり「パブリックブロックチェーン」を基にした暗号通貨ビットコインが発行された。

その後まもなくナカモトサトシは姿を消し、二度と姿を現していない。

2010年

最初の商取引は、その1年ほど先の2010年5月22日アメリカ・フロリダ州でプログラマーのラベロ・ハニャックがピザ2枚を1万ビットコインで購入したのが、ビットコインで商取引が成立した最初の例と言われている。ビットコインが通貨として価値を持った瞬間だ。

その少し前にビットコインの取引所が開設された。 3月、bitcoinmarket.com(現在は廃止済み)が最初の取引所だった。

7月には取引所のMt.Goxが開設された。

2011年~2012年

4月のタイム誌でビットコインの特集が組まれた。

「Online Cash Bitcoin Could Challenge Governments、 Banks」というタイトルだった。その結果1BTCあたり1ドル弱だった価格は急激に伸びていき2014年6月には30ドルの値がつく。

とはいえこの頃ビットコインは、麻薬や武器売買などのアンダーグラウンドな取引に利用されることが多かったと言われている。その辺りはSilk Road事件として有名になったある裏取引サイトの話に詳しく載っている。「シルクロード」創設者のウルブリヒトは、「経済的自由」と「個人の自由」を重視するリバタリアン(自由至上主義者)と言われている。このようにある程度取引が拡大した2012年頃でも、参加者はgeekとリバタリアンそしてアンダーグラウンドな取引限定だった。

2013年

キプロス危機でビットコインを利用する需要が高まり相場は10倍に急騰する。

小国キプロスでは、タックスヘイブン(租税回避地)として、高金利と低税率でロシアの富豪などを中心に海外から多くの資金を集めていた。それゆえに、銀行資産がGDPの8倍となるほど金融機関が巨大になっていた。3月16日にギリシャ危機の連鎖により預金封鎖や預金に対して課税する預金税を実施。その際に富豪たちが行った資金の逃避先がビットコインだった。

ビットコインは市場で通常の通貨によって購入でき、その後購入者が見つかれば、市場で売却できる。そのため、投機対象として注目を集め本格的に普及するきっかけとなった。geekとリバタリアン限定だったビットコイン市場に投資家が入ってきたのが2013年だ。

ハッキング

このようにBitcoinの価値が高まるにつれ、ハッキング被害も発生していた。

日本の取引所Mt.Goxは、2013年に最大の暗号資産取引所となる。ピーク時には全Bitcoinトランザクションの70%を取り扱った。

2014年2月にMt.Goxは、最初の大規模な暗号資産取引所のハッキング被害に遭い、85万BTCを盗まれる。被害額は当時の価格で460,000,000ドル(現在の評価額は約95億ドル)に及んだ。

※このハッキングについては「仮想通貨3.0」マルク・カルプレス著に詳しくある。

そのビットコインをベースに2013年5月までに、Litecoinを含む10の暗号資産が登場した。それはビットコインをコピペし(ビットコインのプログラムはオープンソースソフトウェアとしてネットワーク上にあり、そのコードをコピーすればいいだけ)、少し独自機能を追加させた暗号通貨としての役割しか持っていなかった。

ビットコインソース:https://github.com/bitcoin/bitcoin

まとめると、web3の始まりはこの白書を書いた〝Satoshi Nakamoto〟による
1.二重支払い問題を解決した暗号学的証明に基づいた電子取引システム
2.ブロックチェーンの発明
3.ビットコインの発行

により始まった。

そしてイーサリアム。
“Less trust, more truth”(信頼を減らし、真実を増やす)

ビットコインが誕生した後、暗号通貨を生み出したブロックチェーン技術は、もっと様々な事ができるはずだと考えたのがヴィタリック・ブテリン(ロシア系カナダ人)だった。

ヴィタリック・ブテリンはWIREDのインタビューでこう答えている。

「ビットコインとの出合いから2年後、ぼくは大学に通っていた。でもそのとき、週に30時間以上をビットコイン関連のプロジェクトに費やしていることに気づいたんだ。ぼくは大学を辞めることを決め、世界中のビットコインのプロジェクトを見て回る旅に出ることにしたんだ。ビットコイン界でいま何が起きていて、人々はどんなことをやっているのかを知るためにね。
旅を5カ月続けた。そのなかで次第に、人々がブロックチェーンを仮想通貨以外の目的に使おうとしていることに気づいた。分散型の送金システム、モノの売買、個人認証、クラウドファンディング…。そうしたさまざまな用途のアプリケーションにブロックチェーンが活用されていることを知ったんだ。でもそのときに人々が使っていたブロックチェーンのプラットフォームが、彼らをサポートするのに十分ではないとも思った。」

「特定のひとつ、あるいはいくつかのアプリケーションのためだけに設計されたブロックチェーンをつくる代わりに、あらゆる目的のために使えるブロックチェーンのプラットフォームをつくればいいんじゃないかと気づいたんだ。少しのコードを書いて、アップロードするだけで、個別のアプリケーションのためのブロックチェーンシステムが手に入れられるようなプラットフォームだ。それがイーサリアムの核となるアイデアにつながっていった。」

2013年

イーサリアムネットワークは当時19歳のヴィタリック・ブテリンがアイデアを提案しそれに賛同したギャビン・ウッド(イギリスのコンピュータ科学者)と共同で創設された。

ギャビン・ウッドはブロックチェーンを「プログラミング可能な分散台帳」に進化させるためにスマートコントラクトと呼ばれるプログラムを記述するためのプログラミング言語「Solidity」を提案、開発した。

この「スマートコントラクト」の概念は米国のコンピュータサイエンス/暗号技術の研究者であるNick Szaboによって考案されたもので、2004年に米国で開催したIEEEのワークショップで以下のように説明している。

「スマートコントラクトの初期の原型であると一般的に考えられる実例は、一般的な自動販売機です。自動販売機は、硬貨が入ると表示された価格に従って商品を提供します。自動販売機は商品運搬者が用意した契約です。硬貨を持っている人は誰でも業者との取引に参加できます。自動販売機のロックボックス(金庫)およびセキュリティ機構は、さまざまな場所に自動販売機の設置を可能にするために、投入された硬貨および販売商品を攻撃者から保護しています。」

この定義をもとに、ブロックチェーン上で行われる自動契約システムをイーサリアム上に作ったのがイーサリアムのスマートコントラクトだ。

2014年

2014年にはイーサリアムにおけるスマートコントラクトのランタイムシステムであるEVM (Ethereum Virtual Machine) を定義した技術仕様書を発表した。

2014年7月22日、イーサ (ETH) の先行販売が開始される。先行販売の期間は42日間設けられ、早期に購入するほど割安にイーサ (ETH) を入手できるというものだった。最も割安なレートは、1BTCあたり2000ETH。当時のビットコインのレートは1BTC=68,000円で、それをもとに計算すると、1ETHの価格は約34円となった。

これによってイーサリアムは約15億円の資金調達をした。

イーサリアムの2つの特徴

このイーサリアムには大きく2つの特徴がある。まず一つは、先程も説明した「スマートコントラクト」と呼ばれる機能。これは、あらかじめ設定されたルールに従って取引プロセスを実行するプログラムのことで、この機能によりこれまで煩雑だったトークンの取引や管理を効率化することが可能になった。

もう一つは、独自のトークンを発行できるという特徴だ。それは独自の専用ブロックチェーンを持たずEthereumネットワークを利用してトークンを発行する事ができるということだ。なお、このようなEthereum上にあるトークンをERC-20トークンと呼ぶ。

この特徴はビットコインとの比較でよく語られるが、ビットコインは決済手段に特化している一方で、イーサリアムはその上にさまざまなアプリケーションを構築・稼働させることができる。これによって多種多様なビジネスを成立させるプラットフォームとしての地位を確立した。

このようにブロックチェーンはVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)とGavin james Wood(ギャビン・ウッド)により大きな進化を遂げることになる。

2015年

7月30日、イーサリアムブロックチェーンが一般公開。

最初のブロックが生成され、内部通貨であるイーサ (ETH) のマイニングができるようになる。

2015年8月のイーサ (ETH) の価格は1,25ドル (約140円) 。先行販売時と比べて、約4倍の価格となる。

2016年

4月、The DAOのICO。

ドイツのスタートアップ企業をバックにもつ分散型投資組織「The DAO」が、イーサリアムのスマートコントラクトを通じてトークンを発行し、資金調達(ICO)が行なわれ、トークンはイーサ (ETH) と引き換えに販売された。このICOは、開始2週間で約1億ドル (約110億円) の資金調達を達成。

6月、The DAO事件。

「The DAO」によって記述されたスマートコントラクトに脆弱性が見つかり、ハッカーがその脆弱性をついて「The DAO」が集めたイーサ (ETH) を盗み出す事件が起きた。盗難されたイーサの量は360万ETH以上で、当時のレートに直すと日本円で約52億円だ。

イーサリアム開発チームは、新たなブロックチェーンを分岐させ、盗まれた記録のあるブロックチェーンを破棄するハードフォークを決定。しかしこのハードフォークに対して開発者の一部が反発し、盗まれた記録のある従来のブロックチェーンを使用し続けた。こうしてイーサリアムは、新たなブロックチェーンの通貨を「イーサリアム」、従来のブロックチェーンの通貨を「イーサリアムクラシック (ETC) 」として分裂することとなった。

この事件の影響で、イーサリアムの価格は約2,400円から約1,200円へ下落した。

2017年

2月 「イーサリアム企業連合 (EEA)」の発足

イーサリアムブロックチェーンをもとにした、企業向けブロックチェーンを開発する、Enterprise Ethereum Alliance (イーサリアム企業連合:略称EEA)が発足。

EEA発足当時の参加企業は約30社で、英石油大手のBP社や米金融大手のJPモルガン 、米マイクロソフト社といった大手企業が名を連ねた。なお現時点 (2021年5月) のEEA参加企業数は200社以上。野村総合研究所やNTTデータなど、日本企業も参加している。

EAA発足当時のイーサリアムの価格は約1,200円だったが、3ヶ月後に約8,000円まで上昇した。

2018年

代替不可能なトークン(NFT: Non-fungible token、ノン ファンジブル トークン。)の標準「ERC721」が2018年1月に提案された。

以上のように見てきた通りイーサリアムのスマートコントラクトにより2022年4月時点で18,000以上を超える暗号通貨が発行されている。

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投稿者: U2

あたらしお金の仕組みを知るために2021年から暗号通貨を始める。1.5倍、2倍とどんどん上がる価値に喜んだのもつかの間、2022年暗号通貨の冬にどっぷり浸かりあっという間に1/10になってしまう。 Defi、NFT、DEX、ICOに参加などいろいろ体験するあいだにweb3が本格的に動きだしたのでわかりにくいweb3周りをシェアしようと思い立った。

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